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小説風:第1話 合コンサッカー 〜フィールドに散った青春〜

takibitoshippo

愛犬と一緒に「しっぽを振りながら」自然を楽しむ、ゆるキャンライフを発信中。 このブログでは、初心者でも気軽に始められるキャンプ術や、犬連れならではの工夫を紹介しています。 目指すのは、“ちょっと不器用でも、楽しいアウトドア”。 焚き火としっぽが揺れる、そんな時間を一緒に楽しみましょう。

プロローグ

「人生において勝利を得る方法はいろいろとある。しかし、苦労を伴わずしてそれを得ることはできない」

デビッド・ベッカムの言葉が頭の中で響いている。今夜、俺たちの戦いが始まろうとしていた。

会話というボールを蹴り、感情のフィールドを縦横無尽に駆け巡る。俺たちを止められる奴なんていない……そう信じていた。

さあ、舞台に上がろうか。合コンという名のフィールドに。


第一章 VSスコットランド パス回し

俺たちは小学校からの幼なじみ四人組だ。

全員今まで彼女はおろか、女性と話した事もほとんどない。だが、ある日4人の中の一人が言った。

それは俺たちの心の中で燻ぶっていた思いを……炎を燃え上がらせることとなった。

「このままでいいのか?! 俺達の青春はこのまま終わっちまっていいのか?! 」っと。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

居酒屋の個室に入ると、すでに女性陣が座っていた。

まずは選手紹介といこう。

「あの……は、はじめまして……」

最初に口を開いたのは池村面成(いけむら・おもなり)、24歳。通称イケメン。芸能人にいてもおかしくないレベルの美男子だが、致命的な弱点を抱えている。

「はじめましてー、私、真子って言います!」

明るい声で応えたのは、ショートカットの快活そうな女性だ。

「こっちが明美ね」

真子が隣の女性を紹介する。明美もまた人懐っこい笑顔を浮かべていた。今日の対戦相手、なかなかの強敵だ。

「じゃ、じゃあこちらも……彼が含小田君です」

イケメンが震え声で隣の男を指す。

含小田兄雄(がんおだ・あにお)、24歳。アニメ全般に詳しいオタクだが、特にガンダムシリーズへの愛は異常なレベルだ。

「はーい、次は女子ね。この子は美鈴」

指差された女性は少し大人びた雰囲気を醸し出している。お姉さん系という言葉がぴったりだ。

「じゃあ……次はこちらですね。一番奥が狩波君」

狩波勉三(がりなみ・べんぞう)、24歳。通称狩勉。黒縁眼鏡をかけた理論派で、勉強だけは誰にも負けない。

「最後が奥の加奈」

黄色いブラウスに髪をアップにした女性。おっとり系の美人だ。

「じ、じゃあトリは鈴木正一君です」

俺だ。

「はじめまし——」

(……って誰も聞いてないのかーいっ!!)

すでに女性陣は女同士でキャッキャと盛り上がっていた。このままでは完全に置いてきぼりだ。

(クソ……このままじゃまずい。とにかくボール、もとい会話を奪い返さなければ……)

「あの……の、飲み物どうしましょうか?」

イケメンが割り込むように声をあげる。ナイス判断だ。

女性陣がそれぞれ注文を告げる中、真子が口を開いた。

「それにしても池村君って本当にイケメンだよねー」

やはりイケメンの破壊力は絶大だ。ここから会話を広げてくれるはず——頼む!

俺はイケメンに目配せする。ウインクを五回ほど。

イケメンが俺に気づく。よし!

「し、正一、目が痛いの?」

違あああああああああう!!

慌ててジェスチャーで説明する。

(会話を…広げて…パスを…頼む)

イケメンの頭上に巨大なクエスチョンマークが浮かんでいるのが見えた。ダメだ、もっと事前に作戦を練っておくべきだった。

ここは俺が——

「ガンダムって知ってる?」

含小田が突然口火を切った。

(お前は何を言っているんだ!ここにガンダムは関係ない!)

「ガンダムだって。明美、知ってる?」

「さあ……」

真子が明美に話を振ると、明美はあっさりと話題を切り捨てた。

そのとき狩勉が口を開く。

「出た〜!スコットランド特有のパス回し!フットボールを世界に広めたパスサッカーの本家!」

(お前も何を言ってるんだ!しかも誰に向かって解説してるんだ!)

女性陣はそんな俺たちをよそに、完全に内輪で盛り上がっている。

話題を変えなければ……

「池村君って彼女いるの?好きなタイプは?」

真子が切り込んだ。さすがエースストライカーのイケメンだ。女性から積極的にパスが来る。

よし、作戦を立て直そう。イケメンにボールを集中させ、そこから突破口を開く。

ニッポン!チャチャチャ!ニッポン!チャチャチャ!

心の中で応援歌が鳴り響く。いい緊張感だ。

「僕はガンダムの中で言うとマチルダさんかな」

含小田……お前にパスは来ていない……そして一度ガンダムから離れろ!

「ぼ、僕はいないです……」

イケメンが照れながら答える。

「えー、嘘!格好いいのに?」

プルルルルルルルル……

「池村君、電話鳴ってるよ?」

イケメンが携帯を確認すると、満面の笑みを浮かべて電話に出た。

「あ!ママー?面成ちゃんだよぉ〜。うん、今合コン中。安心してママァ……」

そう……池村の致命的な欠点、それは——

マザコンだった。

女性陣の表情が一瞬で凍りついた。

「——試合終了——」

女性陣は「急に用事を思い出した」と言い、そそくさと帰っていく。

残された四人。空気が重い。まるで大敗した日のロッカールームのように。

ふとデビッド・ベッカムの言葉が蘇る。

「人生において勝利を得る方法はいろいろとある。しかし、苦労を伴わずしてそれを得ることはできない」

俺たちは……負けたんだ。

悔しさに畳を殴りつける。ドンッという音と共に、悲しみと無念が込み上げてきた。

ベッカムは言っていた。苦労を伴わずして勝利はない、と。これがその苦労なんだ。

今は仲間を励まさなければ。

「俺たちは……やれることはやったんだ。頑張ったんだ……みんな誇っていい!」

「正一……お前……」

イケメンが震え声をあげる。俯いていた顔を上げると、涙がポロポロと流れていた。

そして俺たちは円陣を組んだ。

戦いは始まったばかりだ。

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