
パチパチと薪が弾ける音が、静寂に包まれた夜のキャンプ場に響く。焚き火の炎が、まるで生き物のようにゆらゆらと踊り、私の顔を温かく照らしていた。日が落ちて肌寒さを感じ始めた頃、準備しておいたアルミホイルに包んだ芋を、そっと火の中へ滑り込ませる。
炎に包まれた芋を眺めながら、ふと考える。なぜゆえに人は芋を食らうのか?答えは簡単だ。
美味しいからだ。
最初にサツマイモを食らったのは紀元前8000年前、遥か南米の地だったそうだ。きっと原住民たちは「ナニコレ!オイシイヨコレ!」とでも言いながら、この甘い根菜に驚いたことだろう。そんな遠い昔に思いを馳せると、なんだか壮大な気持ちになってくる。
日本にサツマイモがやってきたのは、16世紀末から17世紀初頭。中国から琉球を経由して、この島国へと渡ってきた。その名前の由来でもある"薩摩"の武士たちは、初めてこの甘い芋を口にした時、「な……なんだこれは!甘いでござる」と驚嘆したのだろうか。想像するだけで微笑ましい。
そんなどうでもいいような、でもなんだか愛おしい歴史に想いを巡らせながら、芋はじっくりと時間をかけて焼かれていく。炎の向こう側で、アルミホイルが徐々に焦げ色に変わっていくのが見える。

この芋を全国に広めたのが、時の権力者・江戸幕府8代将軍の徳川吉宗だった。飢饉対策として芋の栽培を推奨し、どこでも手に入る庶民の食材へと押し上げた英断の人だ。
「デデデーン デッデッデッデーン!ちゃ~らら~らら~らら~♪」
頭の中で暴れん坊将軍のテーマ曲が鳴り響く。もう吉宗さんは「芋れん坊将軍」で良いんじゃないか……。一人でくすりと笑いながら、炎を見つめ続ける。
アルミホイルの外側は真っ黒に焦げているが、中では芋がゆっくりと熱を帯びているのが分かる。時折、ホイルの隙間から甘い香りが漂ってきて、期待が膨らんでいく。

焼きながら、家で待つ娘の顔を思い出す。前回キャンプから帰った時、「パパ!甘い!」と言いながら、ほっぺたを膨らませて美味しそうに焼き芋を頬張っていた、あの愛らしい笑顔を。今度もお土産に持って帰ろう。きっと喜んでくれるはずだ。
火の様子を見ながら、もう少し待つ。良い感じに焼けてきた。どれ、一つだけ味見で頂こうかな。
トングでそっとアルミホイルを取り出し、少し冷ましてから慎重に開いてみる。湯気とともに、なんとも言えない甘い香りが立ち上った。中からは、しっとりほくほくの美しい黄金色をした焼き芋が姿を現す。
炭火でじっくりと焼かれた芋は、まさに自然の芸術品だ。ガスや電子レンジでは絶対に出せない、この深い甘さと香り。時間をかけて火と向き合った者だけが味わえる、贅沢な瞬間だ。
恐る恐る一口、口の中へ運ぶ。

「……旨い」
思わず声に出してしまった。じっくりと時間をかけて調理された芋が口の中で溶けると、驚くほどの甘さが舌の上で踊り、鼻腔を通り抜けていく。それでいてしつこさは一切なく、しっとりとした口当たりで、まるで上質な和菓子を食べているかのような上品な甘みだ。

炎のゆらめきを眺めながら、ゆっくりと味わう。星空の下、一人静かに過ごすこの時間。都会の喧騒から離れ、シンプルな食材と火だけで作り上げたこの一品は、どんな高級料理にも勝る満足感を与えてくれる。
これだけでも、今夜キャンプに来たかいがあったな。心の奥底から、そう思えた夜だった。

🍠 焚き火としっぽ流 焼き芋の作り方

🔧 材料と準備
- 薩摩芋(中サイズ)…1本
- キッチンペーパー(湿らせる)
- アルミホイル(2重に巻ける長さ)
- 軍手・火ばさみ(安全対策)
📝 手順
- キャンプ出発前の準備
- 薩摩芋をよく洗う
- 湿らせたキッチンペーパーで芋を包む
- その上からアルミホイルを二重に巻く
- 焚き火での焼き方
- 焚き火が熾火(おきび)状態になるまで待つ
- 火の中心ではなく隅の方に芋を置く(焦げ防止)
- 約1時間じっくり火に当てる
- 途中で一度向きを変えると均等に火が通る
- 焼き上がりのチェック
- 軍手をして取り出し、竹串で中心を刺して柔らかさを確認
- すっと通れば完成!
📊 薩摩芋1本(約200g)の栄養成分
項目 | 数値(目安) |
---|---|
カロリー | 約264 kcal |
炭水化物 | 約62 g |
脂質 | 約0.4 g |
タンパク質 | 約2.2 g |
糖質 | 約55 g |
塩分 | 0 g(無添加) |
※品種やサイズにより多少変動します。紅はるかや安納芋などは糖度が高く、より甘く仕上がります。
🔥 焚き火としっぽ流のポイント
熾火(おきび)状態がベスト。炎が強すぎると外側だけ焦げてしまう
湿らせたキッチンペーパーで蒸し焼き効果を高め、ねっとり甘く
アルミホイルは二重巻きで焦げ防止&熱の均一化
火の隅でじっくり焼くことで、芯までホクホクに
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