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小説風:第2話 合コンサッカー~フィールドに散った青春~

takibitoshippo

愛犬と一緒に「しっぽを振りながら」自然を楽しむ、ゆるキャンライフを発信中。 このブログでは、初心者でも気軽に始められるキャンプ術や、犬連れならではの工夫を紹介しています。 目指すのは、“ちょっと不器用でも、楽しいアウトドア”。 焚き火としっぽが揺れる、そんな時間を一緒に楽しみましょう。

俺達の合コンリーグは、初戦は黒星となった。あの時の屈辱は今でも胸に刺さっている。相手チームの華麗な連携プレーの前に、俺達は何もできずに敗北を味わった。心を折られそうになったが、仲間たちの眼差しを見て決意を新たにした。前を向いて突き進むしかない。

今回の対戦カードはキャバ嬢チームだ。格上の相手であることは間違いない。だが、俺達にも意地がある。

居酒屋の個室。畳敷きの六畳間に、俺達四人が正座で並んでいる。まるで面接を待つ就活生のような緊張感が漂っていた。狩勉は眼鏡を何度も拭き直し、池村面成(通称イケメン)は鏡で前髪をチェックしている。含小田兄雄は腕を組んで瞑想状態、そして俺・鈴木正一は手のひらに汗をかきながら時計を見つめていた。

キックオフのホイッスルが鳴るも——いや、実際にはただ約束の時間になっただけだが——一人として相手選手はフィールドに来ない。

「電車とかで遅れているんじゃないか?」狩勉が小声でつぶやく。彼の声には希望的観測が滲んでいた。

俺達の中で不穏な空気が漂い始める。期待と不安が入り混じった重苦しい空気が、六畳間を支配していく。窓の外では夜の街の喧騒が聞こえているのに、この部屋だけが時の止まった異空間のようだった。

30分経っても相手選手は来ない……。

これは不戦勝なのか?いや、ここは不戦敗と言うべきか……。合コンにおいて、相手が来ないのは明らかに俺達の負けだ。魅力のない男どもだと判断されたのだろう。そんな現実が頭をよぎる。

ふいに襖をガラガラと開けて女性が入ってきた。

皆の目に光が戻る。闘志と共に。背筋が一斉にピンと伸び、

イケメンは髪を直し、含小田は座り直した。狩勉に至っては眼鏡を外して慌てて拭いている。

「あのぉ……そろそろ注文いいですか?」

入ってきたのは、エプロン姿の店員だった。年配の女性で、疲れた表情を浮かべている。

さきほどの皆の目に宿った光は、みるみるうちにその力を失う。まるで電球の電源を切ったように、一瞬で部屋の空気が沈んだ。四人の肩が同時に落ちる様子は、さながら敗戦の瞬間だった。

「いや……ちょっと……あのぉ……もうちょっとで相手が来るので……」

切り返したのは、イケメンだった。彼の普段の自信に満ちた声とは打って変わって、どこか弱々しい。

女性店員は無言のまま不機嫌そうに襖をピシャリッと閉める。その音が妙に大きく響き、俺達の心にも響いた。

1時間が経過した。

一体……俺達は何と戦っているんだ?対戦相手が来ない以上、不戦敗は濃厚だ。いや、もう確定的と言ってもいい。

ジリジリとひりつくような焦りが4人を襲う。時計の秒針の刻む音が、まるで俺達の集中力を削り取るカウントダウンのようだ。机の上に乱雑に置かれた4つのクタクタのおしぼりだけが、この絶望的な戦いにおける唯一の味方のように感じる。

狩勉は携帯を何度もチェックしている。着信もメッセージもないのに。イケメンは爪を噛み始めた—彼の悪い癖だ。含小田兄雄は腕組みを解いて、畳の縁を指でなぞっている。俺は天井のシミを数えていた。

2時間が経過した。

まだ相手選手の姿は見えない。もはや希望など微塵もない。店の外では楽しそうな笑い声が聞こえる。きっと他の個室では成功している合コンがあるのだろう。それがより一層、俺達の惨めさを際立たせる。

すると廊下から足音が聞こえる。

4人は襖の向こう側に集中し、息を殺して耳を澄ました。間違いない、女性の足音だ。ヒールの音が規則正しく近づいてくる。

狩勉が興奮して叫ぶ。

「来るのか?来るのか?近づいてきている!ふすまを……開けて……きたあああああああああ!!」

彼の声は裏返り、眼鏡はずり落ちていた。イケメンも身を乗り出し、含小田は固唾を飲んで見守る。俺の心臓は太鼓のように鳴っていた。

襖が開く。

「あのぉ……ラストオーダーです」

またしても店員だった。今度は若い女性だったが、業務的な表情で俺達を見ている。その瞬間、四人の心は完全に折れた。

————試合終了————!

女性陣は結局最後の最後までフィールドに現れなかった……。

残された4人の空気は重たい。前回に引き続き今回も負けたからだ……しかも何も力を発揮できないまま不戦敗という形で……。

狩勉は眼鏡を外してうつむいている。イケメンは髪をくしゃくしゃにして頭を抱えた。含小田は深いため息をついている。そして俺は、この情けない現実を受け入れられずにいた。

ただ茫然と上を向いた。視界に数え切った無数の天井のシミが入り込む。何も考えられなかった……何も……。

ふとイタリアの伝説的ゴールキーパー、ジャンルイジ・ブッフォン選手の名言が頭をよぎる。

『ガキの頃から言われ続けてきたことを、今更ながらに心の中で反芻してるよ。「敗戦にこそ多くの学ぶべきことがある」と』

俺は……俺達は……負けたんだ。

自分の不甲斐なさに苛立ちを覚え、畳を握りしめた拳で殴りつける。ドンッという鈍い音と共に、虚しさと悔しさがこみ上げてきた。畳の感触が妙にリアルで、この状況の現実味を増していく。

隣にいた狩勉は、うつむいたまま肩が小刻みに震えていた。よく見ると、彼の眼鏡のレンズに涙の雫が光っている。

ジャンルイジ・ブッフォンは「敗戦にこそ多くの学ぶべきことがある」と言っていた。俺達はここで多くを学び、成長して行かなければならない……。

今は皆を元気づけなければ……。

「俺達はまだ何も力を発揮していない……戦いはこれからなんだ!」

俺の声は部屋に響いた。三人が顔を上げる。

「正一……君は……」

そう言った狩勉の眼鏡は涙で完全に曇っていた。だが、その奥の瞳には諦めない光が宿っているのを俺は見逃さなかった。

イケメンも顔を上げ、含小田も腕組みを解いた。

そして、俺達は畳の上で円陣を組んだ。四人の手が重なる。その温もりが、絆を再確認させてくれる。

俺達の戦いはこれからだ。

次の試合では必ず——必ず勝利を掴んでみせる。

窓の外で夜が更けていく。だが俺達の心に宿る炎は、まだ消えてはいなかった。

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