キャンプ ストーリー 体験談

小説風:『おっさんズキャンプ』

takibitoshippo

愛犬と一緒に「しっぽを振りながら」自然を楽しむ、ゆるキャンライフを発信中。 このブログでは、初心者でも気軽に始められるキャンプ術や、犬連れならではの工夫を紹介しています。 目指すのは、“ちょっと不器用でも、楽しいアウトドア”。 焚き火としっぽが揺れる、そんな時間を一緒に楽しみましょう。

「今度キャンプ行かないかい?」
「やったことないけど面白そうだな」

そんな何気ない会話が、僕らオッサン3人を静岡の山奥へと導いた。
彼らとは小学生の頃からの付き合いだ。
ランドセルを背負って、よく4人で駄菓子屋に走った。
くじ引きでお小遣いを全部使ってしまったり、
「このお菓子うまいぞ!」と笑い合った日々。
それが、今では娘たちの話をしながらテントを張る年齢になった。

今日は、亡き親友の分も含めて3人でキャンプに来た。
……と言っても、健太は少し遅れてくるらしい。

場所は静岡の山奥。
森は静かで空気は澄んでいる。
ヒロと先にチェックインを済ませ設営に取り掛かる。
だが、生憎の雨だった。

「おかしいな、予報だと午後は晴れだったのに……」
山の天気は気まぐれで予報なんてあてにならない。
僕らは雨具を着込み荷運びから設営を始めた。

ヒロとはキャンプに行ったことはなかったけれど、
中学の頃同じ剣道部だった。
部活後のモップ掛けを一緒にやった記憶が雨音に混じって蘇る。
あの頃も無言で並んで床を拭いていたっけ。
今も変わらず黙々とテントを張る。

設営が終わりコーヒーを淹れる。
湯気の向こうでヒロがぽつりと最近の話を始めた。
他愛もない世間話。
それが妙に心地よかった。

天気も次第と晴れ間を見せ雨は上がった。

しばらくして健太が到着した。
彼は、最近四輪駆動の新車を買ったらしい。
キャンプにぴったりの車だ。
だが、出発前に奥さんに見つかり、
「新車でキャンプはダメ!」と一喝されたそうだ。
結果、奥さんの軽自動車で来ることに。

「新車で来たかったなぁ…」
ぼやきながらも焚き火周りの設営を始める健太。
その姿に僕らは笑いながら手を貸した。

「腹も減ってきたし、そろそろ焚き火でもするか」
火を起こし、BBQが始まる。
肉の焼ける音と香ばしい匂い。
夜が静かに降りてくる。

焚き火の炎が揺れる。
その灯りの中で僕らは語り始めた。
仕事のこと、家族のこと、夢のこと。
そして、あいつのこと。

健太は娘の成長に驚きながら、
「最近、反抗期でさ……でも可愛いんだよな」と笑う。
ヒロは、チェコにいる娘の話をしながら、
「俺も、もうちょっと頑張らないとな」と資格勉強への決意を語る。

そして、亡き親友の話になると、みんな少し黙った。
「最後まで俺らのこと心配してたよな」
「うん……あの時、手握ったらさ、俺の体調気にしてくれてさ……」
焚き火の音だけが静かに響いていた。

キャンプはただのアウトドアじゃない。
僕らにとっては人生を語り合う場所。
亡き友を偲び、今を生きる自分たちを見つめ直す時間。

人生は山登りのようなものだ。
こういう時間が、自分が今どこにいるのか、
道は間違っていないのかを確認させてくれる。

「この空間がさ……なんか、すごく幸せだよな」
健太がぽつりとつぶやいた。
ヒロも「うん、なんか……生きてるって感じする」と応えた。

僕は、焚き火の炎を見つめながら思う。
この時間をずっと忘れたくない。
そして、あいつにも届いてほしい。
「俺たち、ちゃんと生きてるよ」って。

google-site-verification: google4b40203ad21689de.html
google-site-verification: google4b40203ad21689de.html
  • この記事を書いた人

takibitoshippo

愛犬と一緒に「しっぽを振りながら」自然を楽しむ、ゆるキャンライフを発信中。 このブログでは、初心者でも気軽に始められるキャンプ術や、犬連れならではの工夫を紹介しています。 目指すのは、“ちょっと不器用でも、楽しいアウトドア”。 焚き火としっぽが揺れる、そんな時間を一緒に楽しみましょう。

-キャンプ, ストーリー, 体験談
-, , , , , , , , , ,